○「五島慶太伝」第2版ができました/訂正箇所がありますので掲載します・・・新版を新5年生に配布 /図書室に50部配架
○昨日 卒業生来校
(校長発:平成27年4月9日木曜) 晴れ
このとき、慶太の度量というか度胸が並外れたものであることを示すエピソードがある。
原政権ができて間もないある日のこと、慶太は、上司の総務課長佐竹三吾と共に木挽町の料亭にいた。業務課長の村井次郎吉、同僚の喜安健次郎も一緒だった。
慶太はこの席で、かねて喜安健次郎と話し合っていたある提案をしようと考えていた。
「野田新大臣のもとで中西清一監督局長を逓信省次官にすべきではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。」
慶太の藪から棒の話に佐竹は戸惑ったが、それが自分の考えと合致しているので感心した。
「俺も中西清一次官になれば良いと思っているが、どうやって実現できるというのかね?」
「手づるがございます。課長は古市男爵をご存じでしょう。」
「ああ、存じ上げておる。」
と答えながら佐竹は、はっと気がついたように
「おお、そうか。そういうことか。」と満面に笑みを浮かべた。
実は、古市男爵は、慶太の結婚にあたって万千代側の媒酌人に立った人なのである。慶太側の媒酌人はもちろん富井男爵であった。
「そうです。古市男爵は私の親も同然です。そして男爵は野田新大臣の岳父です。
課長のご了承が得られれば、私が古市男爵にお願い致しまして、
男爵から野田新大臣に『中西局長を次官に昇格させるよう』
推薦していただきます。」
佐竹は、慶太という人物の考えるスケールが大きいことに感心した。そして実行する胆力を持っている男だと頼もしく思った。佐竹は二つ返事で慶太の提案を了承した。
このとき、慶太の度量というか度胸を測るかのごとき出来事が起きた。
原政権ができて間もなく、慶太は、上司の総務課長佐竹三吾に「今夜、木挽町の料亭に来るように」言われた。
命ぜられるままに赴くと、業務課長の村井次郎吉、同僚の喜安健次郎が緊張した風情で同席していた。佐竹が切り出した。
「五島君、君は古市男爵を知っているそうだな。」
古市男爵は、慶太の結婚にあたって萬千代側の媒酌人に立った人である。慶太側の媒酌人はもちろん富井男爵であった。
「ええ、家内の媒酌人ですから、親も同然です。」
「そうか、それなら話は早い。古市男爵の娘さんが野田新大臣の家に嫁いでいることも知っているだろう。」
「もちろんです。」
「私は、中西清一監督局長を逓信省次官にするよう野田大臣に推薦したいのだ。
しかし野田大臣に手づるがあるのは五島君、君しかいないのだ。
ひとつ、古市男爵に中西局長を次官に推薦するよう君から話してくれないか。」
慶太は、中西局長が次官に昇進するのがふさわしいとかねて喜安健次郎と話し合っていたので、すぐ話を飲み込んだ。
「野田大臣の親戚の古市男爵から中西局長を推薦すれば事はスムーズに運ぶだろうということですね。わかりました。やってみましょう。」
慶太は二つ返事で引き受けた。